イネ品種のいもち病圃場抵抗性の遺伝子解析

摘要

いもち病はイネの最重要病害で，その防除は現在主に薬剤によって行われている。 しかし，環境に配慮した農業を推進するため，イネのもつ抵抗性の有効利用が強く求められている。 特に，圃場抵抗性は，いもち病菌レースによる抵抗性の崩壊が起きにくいため，抵抗性品種の育成において非常に有用である。 これまでのいもち病圃場抵抗性に関する遺伝学的研究によれば，本抵抗性は量的形質で，一部には主働抵抗性遺伝子支配のものもある（篠田ら，1971；烏山ら，1968）が，その多くはポリジーンによって支配されている。 しかし，これらの詳細な遺伝解析事例は少ない。一方，近年の分子生物学的手法のめざましい発展は，これまで解析が困難であった量的形質の詳細な解析を可能にし，イネの出穂期に関しては，複数の遺伝子が単離され，遺伝子間の相互作用も解明されつつある（YAMAMOIO，et al．，2000；YANO，et al．，2000）。 そこで，筆者らは，分子生物学的手法を用いて，いもち病圃場抵抗性に関する遺伝子のマップベースドクローニング（DNAマーカ一連鎖地図を利用した遺伝子学離）を目指し，遺伝子の数および作用力の推定，染色体上の座乗位置の決定を行った。 ここではその概要を述べるとともに，同様の手法で進められている他のいもち病圃場抵抗性遺伝子の遺伝子解析についても紹介する。