遺伝子と歴史から見る牛の毛色

摘要

家畜動物の毛色はさまざまであり，各品種において特徴的な毛色を呈している。本稿では牛の毛色を取り上げ，牛品種の毛色変異や現在明らかとなっている毛色関連遺伝子について説明する。 また，牛の毛色が人類の歴史背景や好みによって変化していく実例について述べる。 さらに毛色は品種を示す特徴的な形質であることから，毛色問遠道伝子を用いた牛の品種鑑定への利用について紹介する。 野生動物の毛色や体毛パターンはおおむねその種ごとに固定されている。 これは，個々の野生動物が自然環境に適した結果であり，生存に有利な毛色が残されてきたためであると考えられている。 これに対し，家畜動物の毛色は実にさまざまである。 家畜は人類に保護されてきたため，家畜集団で起こった毛色の突然変異は自然淘汰の対象とはならず，むしろ各品種においてさまざまな毛色が固定されている。