体細胞クローン牛作出の現状

摘要

体細胞からのクローン動物は，もはやクローン羊“ドリー”だけではなくなった．マウスやウシでもクローン動物の作出が成功したことから，今後の焦点は，なぜ哺乳動物でクローン作出が可能になったのか，この技術をどのように利用してゆくのか，とし、うことに移っている．哺乳動物では，1個の細胞が個体の全組織を形作る能力，すなわち全能性は受精卵だけがもちうると考えられていた．しかし，“ドリー”を含めた体細胞クローン動物の誕生は，この教科書的常識をうち破り，分化した細胞でも未受稚卵に核移植すれば，全能性を再獲得できることが示された．この成功は，驚くほどシンプルな仮税によって達成された．しかし．それは決して突発的な成果ではない．今世紀になって．体外で生殖細胞を操作する研究が始められ，とくに1980年以降の発生工学、生殖工学と呼ばれる研究磯城の進展は急であり．その集大成として可能となったと考えることができる．本稿では，家畜のクローン技術の概要を解説すると共に．どのようにして体細胞クローン牛の作出が可能になったのか，今後この技術がどのように展開されようとしているのかについて概説した．