バレイショ遺伝資源の利用

摘要

バレイショの遺伝資源は多様である．近縁種の地理的分布は，北米の中西部から南米のチリまで幅広く存在する．気候的にも，南米の海岸砂漠，アリゾナやメキシコの乾燥地帯から，アンデスの熱帯高地，アマゾン上流の亜熱帯地域と多様な生息域があり，二倍性から六倍性まで約200種存在する．これら野生種は，形態や生態が多様であるだけでなく，病虫害抵抗性や耐冷性，耐霜性等の過酷環境への耐性の面で，既存の四倍性栽培品種のものより，はるかに優れている系統がたくさhある．また，近縁の栽培種には，赤，オレンジや紫の色素を塊茎にもち，これらが機能食品として用いられる可能性もでてきている．バレイショの遺伝資源は，国際ジーンバンクによる体系的な収集，保存および情報整理により，有効に利用できるようになった．そして，細胞遺伝学や量的遺伝学の知見の蓄積，分子生物学関連の科学技術の導入により，これまで多くの時間や資材を要した品種改良が，作業，時間や資材について省力化でき，飛躍的に推進できるようになってきた．