メンテソレ-フィッシャー論争―「メンデルの軌跡を訪ねる旅」から(2

摘要

遺伝学の創始者メンデル（Gregor Johann Mendel) が，遺伝学を出発させることになつた記念碑的な 論文0について，実験データの操作があつたとい う話を耳にされた方もおられるのではないだろう か。私も，そのような説があることは知っており， ときおり断片的に耳に入ってくることは経験して いる。今回は，これがどうしてそのようなことに なった力1，また，その経過はどうであるかを紹介 したいと思う。これは，昨今科学の世界において， さまざまなレベルでの実験データの人為的な操 作、捏造が話題になっている力s，その関連で「か のメンデルすらデータの操作をおこなった」とい う語り口で出され，しかも，それはあたかも事実 であり，確定したことであるかのごとく取り扱わ れることも多い。しかし，実際はその説は否定的 に捉えた方がいいということが判明しており，そ の経過を報告することが目的である。また，本稿 の結論も，現代問題にされている話題とは異なつ ているということを具体的に述べることである。