日本の中学校、高校における「遺伝教育」—現状と問題点

摘要

文科省の新しい学習指導要領のもと（2013年度から施行）で，中学、高校の理科、生物教科における遺伝分野の内 容は大きく変わった。DNA 、遺伝子の構造と機能を分子レベルで学習することに比重が置かれるようになつたこと は大きな進展である。しかし一方，メンデルの遣伝の法則が中学校に移行し，高校生物では扱われなくなった。中 学では減数分裂が効果的に提示されないので，肝心な「遺伝の仕組み」について十分な理解が得られなくなる畏れ がでてきた。そして人々の実生活に身近な「ヒ卜の遺伝」についての扱いに改善はみられない。国民の遣伝リテラシ一 を育むための中等教育課程で，本来必要な「遺伝」の内容は何か，海外での遺伝教育の状況と比較しながら考察した。