植物I——植物の系統と進化

摘要

植物の系統と新しい分類体系を見ていく前に，まず，植 物とは何かについて考えてみょう。一般的に植物とは，固 着生活をして，光合成により自分自身で栄養を作り出す生 物群であるととらえられていることが多い。しかし，本講座第4回の「原生生物」で解説されているように，真核生 物の中で光合成生物は原生生物の多くの系統群にまたが り，またさまざまな進化過程を経て誕生,進化している。 そのため，植物と他の生物をどのように線引きするかにつ いてはいくつかの異なる意見が出されてきた。たとえば， ホイタッカーの五界説"では，真核の光合成生物のほとh どは植物界に入れられていた。しかし，この定義では植物 界は多系統群になり，系統関係を反映した定義にはならな いこと力s現在では明らかになつている。また，マ一グリス とシュワルツ2)のように，植物を陸上植物（有胚植物）の みに限定する意見もある（本講座第1回の図1を参照)。し力、し， このように植物を定義すると，同じ単系統群に属する狭義 の緑藻類ゃストレプト植物は異なる界に属することになる (各群の範囲は図1を参照)。シャジクモ類ゃコレオケーテ 類は多細胞生物であり，また陸上植物の直系の祖先系統であることがわかっているので，このような区分には違和感がある。