ウェアラブルセンサ技術と 家畜疾病の早期発見

摘要

ウェアラブルセンサ技術は、動物やヒトに取り 付けたセンサによって行動や生理機能の変化 をモニタリングする技術で、様々なタイプのワイ ャレスセンサの開発が進められている。動物 用ウェアラブルデバイスの代表的な製品として は、牛の耳や首輪に付けたり、ペットの皮下に埋め込むタイプの個体識別用RFID (Radio Frequency Identification)タグが世界各地 で普及している"。また、野生動物の行動記 録を目的としたGPSやカメラ機能を付与した首 輪型センサや歩数情報から牛の発情徴候を 検知するセンシング技術なども実用化されてい る"。現在、動物用ウェアラブルデバイスの生 産量が最も多いのは中国で、RFIDのような低 価格の単純な製品を大量に供給している。市 場調査レポートによると世界の動物用ウェアラブ ルデバイスの市場規模は、今後10年で2.5倍 に拡大する見通しで、デバイスの種類も単純な RFIDから動物の健康管理や病気の検査を可 能にするような様々な機能を持ったシステム開 発と市場化が進むと見込まれている"。家畜に 装着して生理情報を持続的にモニタリングする タイプのウェアラブルセンサ開発を行う際には、 生体への負担が少ない小型、省電力化の技術 開発が重要なポイントとなる。微小化された機 能要素から構成される機械技術としてMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)力s あり、主に工学製品であるプリンタヘッドや自動車用センサに活用されている。MEMSの特徴 は、低消費電力、超小型化、低コスト化が可 能で、センサの入出力が多岐多様（電気信号、 物理量、化学量など）な点にある2)。 MEMS 等の技術革新の進展によるセンサの小型.省 電力化の実現は、これまで研究用に限定され ていた家畜の様々な生理機能の連続モニタリン グ技術を実用レベルに押し上げる契機になって いる。