地域特性を生かした牛ゲノム選抜手法確立(1)

摘要

近年農畜産物の国際競争が厳しくなる中で、 わが国固有の資源である和牛の「強み」を活 かすには、遺伝子情報を活用することにより和 牛の能力評価の高精度化を図ることが重要である。和牛の育種改良を加速するには、SNP情 報を用いるゲノム育種価評価手法の適用が必須 である。乳牛の分野ではSNP情報を活用した遺伝的 能力評価（ゲノミック評価）がすでに実用化され ており、黒毛和種においてもゲノム育種価評価 手法の実用化が強く望まれている。当協会は JRA日本中央競馬会の助成を受けて平成26年 度より3力年間、「地域特性を生かした牛ゲノム 選抜手法確立事業」と題した特別振興資金助 成事業を実施した。本事業は、先行する乳牛 のように種雄牛をレファレンス集団とするのではな <>肥育牛の枝肉成績とSNP情報とを利用する ことでゲノム育種価評価手法を確立することを試 みたものである。当協会がこれまで各県畜産試験場等との共同研究で和牛のSNP型の調査を 行ってきたところ、地域ごとに分集団化の特色が 見られ、和牛成立の過程を反映していると考えられた。したがって、SNP情報を持つレフアレン ス集団を地域ごとに構成すれば、地域特性を発 揮する次世代の種雄牛の能力をゲノム選抜で正 確に推定できることが期待される。それぞれの 地域特性を生かした種雄牛の遺伝能力評価手 法を確立する上で、SNP情報を活用したゲノム 選抜手法の確立を目指すことは意義が深い。