ゲノム情報に基づく非相加的遺伝効果を考慮した遺伝的能力評価法

摘要

家畜の育種改良は、選抜対象となる形質におけ る遺伝的能力を予測しその推定値に基づいて選抜-交配を繰り返すことによって行われる。20世紀 後半にコンピューターの能力が飛躍的に向上したことから、家畜の遺伝的能力評価には大規模な個 体間の血縁情報を利用して遺伝的能力を推定する BLUP法が用いられてきた。一方、ヒトゲノムプロ ジヱクトの成功によって、近年、家畜のゲノム解析も 急速に進展し、ゲノム全体をほぼ等間隔に網羅する 数万規模の1塩基多型（SNP)マーカーの利用が可 能になってきた。現在では、このような大量のSNP マーカー情報を用いて遺伝的能力を評価するゲノ ミックBLUP (GBLUP)法（VanRaden 2008)が開 発されている。GBLUP法はSNPマーカーに基づい て個体間の類似度をゲノム関係行列として構築し BLUP法における血縁関係行列に置き換えた方法 である。GBLUP法では、SNPマーカーが手に入り 次第、早期に選抜することによって世代間隔を短縮 し、遺伝的改良量を向上させることができる。SNP 型判定の費用は1個体あたり約2万円といまだ高額 ではあるが、乳牛の育種では費用対効果が高いこヒから、GBLUP法は欧米を中心に実用化されつつ あり、わが国においても導入が検討されている。