乳房炎抵抗性にかかわる遺伝子の同定

摘要

乳牛が最も握りやすい疾患である乳房炎は、乳房内で病原微生物が増殖して起こる感染症である。 主な原因微生物には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌群などの常在細菌があげられる。 症状には、乳房の発熱、発赤、および乳汁中に凝固物がみられる臨床型乳房炎と、乳房の所見が不明瞭であるが、乳汁中に起因菌や体細胞などの炎症産物が増加している潜在性乳房炎があり、発生件数では潜在性乳房炎が多数を占めている。 乳房炎に罷ると、生産乳の出荷停止や治療費の負担だけでなく、完治が困難なために、感染牛の淘汰更新の経費もかかる。 そこで、多くの酪農家は、乳房炎の発生予防のために、飼育環境を清潔に保ち、搾乳法を工夫するなど、環境要因の改善に努めてきた。 一方、より一層生産費を下げるためには、牛群検定や後代検定などによって改良されている乳生産性の遺伝的能力と同様に、乳房炎抵抗性を遺伝的に高める、すなわち遺伝要因の改善も必要である。