家畜育種の理論とその応用（92）

摘要

今回は実際に単離されたQTLについて，その詳細を解説したい。 あらためて論文を調べなおしてみたが，家畜において座位として報告されているqTLは相当数ある。 その中には複数のグループにおいて検出され，その存在がほぼ確からしいものも多くある。 しかしながら責任遺伝子まで解明されたものはほhのわずかであった。それらも純粋にポリジーンに支配された量的形質に関わる多型というよりは，量的形質ではあるけれども変異アリルによる－ものがほとhどである。 それらにはブタにおけるPSEの原因であるリアノジン受容体1（RYR－1）遺伝子の変異，RNの原因であるAMP一活性化プロテインキナーゼ（AMPK）のγサブユニット（PR鼠AG3）遺伝子の変異，またウシにおいてはダブルマッスルの原因であるミオスタチン（MSTN／GDF8）遺伝子の変異の単離がある。 純粋なQTLとしては乳牛における乳脂晩乳タンパク，乳量についての解析があり，ジアシルグリセロールアシルトランスフエラーゼ1（DGATl），成長ホルモン受容体（GHR）などが責任遺伝子とされている。これらについても最終段階では遺伝学的に単離されたというよりは，ノックアウトマウス等の情事削こより候補遺伝子として解析されたものであり，その後に多型と形質との相関が検証されている。 ブタの肉量に関するqTLとしてインスリン様成長因子2（IGF2）のSNPが単離されているが，これが唯一遺伝学的に責任多型を突き止め，その後に変異よる機能の変化が解明されたものではないだろうか。今後はゲノム全体のSNP解析など，今までとは全く違った手法がとられる可能性はあるが，それぞれの研究が行われた時代の状況もふまえながら個々の研究について解説したい。