前章で示したように,近交退化の原因となる遺伝子の多くは,野生型(正常)遺伝子に対して劣性であり,ヘテロ接合でもわずかに有害性を示すと考えられる。 次に問題になるのは,それらの遺伝子が集団に新たに出現する率(突然変異率)や遺伝子の効果の大きさ(選択係数や優性の度合い)である。 これらの特性は,近交退化や有害遺伝子の集団中での蓄積や除去に対して決定的な影響を与える(Charlesworth and Charlesworth,1999;Wang et al.,1999)。 また,近交退化を遺伝子レベルでモデル化し,動物育種や生物保全における問題を議論する上でも,近交退化の原因遺伝子の特性を知ることは重要である。
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