ラジカル高分子でつくる有機磁性体

摘要

電気を伝えないと考えられていた有機高分子において，単結合と多重結合が交互に連なった方共役高分子の一群が合成され，ドーピングによる導電性の発現が広く認識されるとともに，80年代後半には導電機構の研究とあわせ二次電池などへの応用が試みられていた．導電性高分子がつくれたのなら，磁性をもっ高分子を合成することばできないものか.π共役高分子の一部では，分子内に多数の不対電子が存在しえて，それらのスピン磁気モーメントをπ共役電子雲を介した相互作用によって，同じ方向に整列させうることが理論的に予測されるようになっていた．導電性高分子の次は「磁性高分子」，理論化学の指差す分子構造をもっ共役高分子の合成に取り組hだ研究者は少なくなかった.有機化合物に磁性をもたせることば，機能性高分子の研究にあって未開拓のまま残されたフロンティアであった.