コンピュータ上での実験の計画と解析

摘要

最後にフィッシャーが与えた実験の3原則a反復（繰り返し）b無作為化c局所管理（ブロック化）について考える。 まずa反復（繰り返し）については，コンピュータ実験の場合には同一水準の実験では同一の応答値となるので，反復（繰り返し）は必要なくなる。 また，b無作為化についても，コンピュータ実験における実験順序と計算結果は独立なのでその検討の意義はない。 さらに，c局所管理についても,現実的に当てはまるものは見いだしにくい。 コンピュータ実験ではフィッシャーの3原則の意義が見いだしにくいからといって，伝統的な実験計画法の枠組みを適用することについて，すべてが否定されるものではない。 例えば因子の1次モデル，あるいは2次モデルといった低次数のモデルをあてはめる場合には，吉野（2003）が行っているようにBox and Wilson（1951）が示したその後発展した複合計画の適用が有意義であろう。 その理由としては推定すべき母数の数と実験数の間に大きな差がなく効率的であること，実験点が比較的空間上にバランスよ〈配置されていることがあげられる。 ただし，複合計画における中心点での繰り返しは前述の理由から必要ない。 この一例からもわかるように伝統的な実験計画法を適切な形でコンピュータ実験に応用することで，よりよい形でのコンピュータ実験が構築できる。 冒頭のジュリエットの指摘のとおりこの分野は将来有望であり，また，ロミオが戸惑いつつ説明したとおり分野そのものが始まったところともいえる。 今後さらに，方法の開発が応用とともに進むことが望まれろ。