水熱合成法によるファイバー，シート状ニオブ含有酸性タングステン酸化物の調製と触媒作用

摘要

硫酸や塩酸などの液体のプレソステッド酸，あるいは塩化アルミニウムのように固体であるが溶解して反応させるルイス酸は，酸触媒として化学産業界で広く用いられている．しかしこれらの酸は反応後に多量の廃酸や廃水が発生し，分離も困難であることから環境負荷が大きいという問題点がある．液体の酸に代わり，固体酸触媒をつかった化学合成プロセスが実現され副生成物の発生が抑制できれば，反応後での触媒の回収や再利用が容易になるとともに，環境への負荷を大幅に低減できるものと期待される．固体酸触媒を液相反応に使用する際には，触媒が高活性であることに加え，溶液に溶解せずに反応が進行することが重要である．ゼオライトや蒋層酸化物などの酸性質をもつ無機固体化合物は，気相のみならず液相中でのさまざまな酸触媒反応に有用な触媒である．タングステンを含有する酸性質を示す酸化物には，アンモニア脱硝触媒として使用されるWO3／TiO2に代表されるように，広い表面積を有する酸化物の表面上をWO3が単原子層で被覆したもの，およびNb2O5－WO3のようにアモルファスの混合酸化物として酸性質を発現するものがある．また，ケギソ型ヘテロポリ酸であるH3PW12O40·nH2OやH4SiW12O40·nH2Oのように，結晶性の固体酸も存在する．