自然浄化機構に学ぶ新しい資源回収型酸性坑廃水処理方法の開発

摘要

本研究から，旧幌別硫黄鉱山における現状の坑廃水処理については，これまで主な課題とされてきた中和殿物の大量発生だけではなく，殿物からのヒ素溶出の可能性が示唆された。一方，旧西之牧鉱山地域で明らかにされた自然浄化機構に学ぶ新しい処理方法については，坑廃水中の鉄からシュベルトマナイトを生成させてヒ素を吸着·除去させること，廃棄物である廃コンクリートを利用しかつ石膏主体のヒ素を含まぬ殿物を資源として回収できること，殿物の総発生量を87.3wt％，ヒ素含有の殿物については53.7wt％まで減容化できることの可能性を示した。また，シュベルトマナイトのヒ素吸着能力を最大限に発揮させて効率化を進めることにより，最終的には，ヒ素を含有する殿物の発生量を現状の7.3wt％まで減容化し，一般に高品位とされるヒ素鉱石より高純度（6wt％程度）のヒ素含有殿物を産出し，環境浄化材料となりうるシュベルトマナイトを生成できる可能性を見出した。また，旧西之牧鉱山における自然浄化現象と実験的検証8－10，さらに天然シュベルトマナイトのC~(14)年代測定結果から，シュベルトマナイトはヒ素を吸着することにより構造が安定化し，自然環境条件ではヒ素を固相中に長期的に保持することが確認されている。