国際農業環境研究の進展と日中協力 一農業生態系の窒素循環とその環境影響-

摘要

中国は世界最大の食糧の生産、消費国であるが、市場経済移行にともなう所得向上と継続 する人口増加は、中国の食糧需要を増大させ、農業を質的にも量的にも大きく変化させてき た。米、小麦、トウモロコシ等の「穀物」に、豆類とィモ類を加えた「食糧」（中国語では「粮食」）の年間生産量は、中国全体で1980年代初頭には3億2,000万トン程度であったも のが、その後2000年前後の数年間を除いて増え続け、1996年には5億トン、2011年には6 億トンにそれぞれ達した。この急速な食糧増産は、何よりも、さまざまな農業技術の革新によるものであるが、特に、 化学肥料投入量の増加の寄与が大きい。図1に示すように、中国の窒素肥料消費量の増加 は、食糧生産量の増加とほぼ並行しており、中国は世界最大の消費国となっている。中国に おける単位面積あたり平均窒素肥料消費量は、2000年前後において、すでに我が国や欧米 先進国の値を超えていた。