犬の胸腰部椎間板ヘルニアのMRI所見と予後

摘要

胸腰部椎間板ヘルニアを発症した犬では脊髄や神経根への圧迫や挫傷によって背部痛、歩行失調、対不全麻痺、対麻痺あるいは随意排尿、排便の消失などの神経症状を呈する［ト5］。また症例によっては進行性脊髄軟化症を引き起こし、最悪の場合には呼吸不全によって死にいたることもある［6］。犬の胸腰部椎間板ヘルニアの予後に関しては様々な報告があり、一般的に深部痛覚が残存している症例（Gradel～4）の予後は外科療法あるいは内科療法で良好とされ［7－18］、深部痛覚が消失した症例（Grade5）では注意が必要であるとされている［19，20］。特に深部痛覚を消失して48時間経過した症例（Grade5B）では多くの場合、予後不良と考えられており、諸外国ではこうした症例に対しては積極的な治療を行わず、安楽死を選択することも少なくない［10，2l，22］。しかしGrade5B症例でも外科手術によって7～76％の割合で改善するという報告もあり［10，12，14，23N29］、Grade5B症例における術前の予後判定は極めて困難である。