腸内細菌と機能性消化管疾患

摘要

機能性消化管疾患は器質的疾患を認めないにも関 わらず，消化管に由来すると考えられる症状が慢 性あるいは再発性に持続する疾患である。代表的 疾患として上部消化管領域では機能性ディスぺプ シァ，下部消化管領域では過敏性腸症候群が挙げられる。その国際的診断指針であるRome基準は 2016年にRome IVに改訂された。機能性消化管 疾患の治療は内服加療が基本であるが，奏功せず 難渋することも少なくない。近年になり，機能性 消化管疾患に腸内細菌が関連していることを示す 報告が散見されるようになった。腸内細菌に菌目 した治療戦略としてプロバイオティクスの有効性 が示されてきたが，腸内細菌に着目した新たな治 療戦略として奠便微生物移植法（便移植）の臨床 研究が始まっている。本総説ではこれらの点につ いて最新の知見を交えて解説する。