高齢者陳旧性顔面神経麻痺に対するOrthodromic Temporal Flap法の経験

摘要

緒言:顔面神経麻痺の動的再建の一つに、側頭筋全体を前下方に前進させ鼻唇溝部に直接作用させるLengthening Temporalis Myoplasty (LTM)法があり[1，2]、近年世界的に注目を集めている[3]。様々な利点が存在する一方、手技がやや煩雑で、筋突起離断などある程度の侵襲を伴う。一方、Viterboらの報告したOrthodromic Temporal Flap (OTF)法は、筋突起を離断せずに側頭筋腱膜を外し、鼻唇溝との間に大腿筋膜を移植して笑いの再建を行う手法で、より低侵襲な手技と考えられる[4]。今回我々は、高齢者の陳旧性顔面神経麻痺に対する低侵襲な手技として、筋突起を離断せず大腿筋膜を用いて笑いの再建を行うOTF法を施行すると伴に、Anderson法に準じた下眼險外反の再建を併用した症例を経験したので、その有用性について報告を行う。