ダブルバルーン法(Push-and-Pull法)を用いた小腸内視鏡:ヨーロッパにおける多施設共同前向き試験成績

摘要

小腸疾患が明らかな,または疑われる患者へのダブルバル-ン法(PPE)を用いた小腸内視鏡の臨床的有用性と安全性について,ヨーロッパの3施設による前向き試験の実施を目的とした.3施設において,2004年7月から9月の間に13歳から90歳(平均56±16歳)の100名の患者を対象とした.主症状は,急性反復性または慢性消化管出血が64例,消化管ポリポーシス8例,慢性腹痛7例,慢性下痢7例,その他14例である.ダブルバル-ン法による穿孔,大出血や腸管組織および腸間膜損傷などの重大な合併症は起こらなかった.小さな合併症は12%にみられた.経口的および経肛門的施行時間は32分-150分(平均75±19分)であった.小腸到達距離は経口的アプローチ法では平均220±90cm,経肛門的アプローチ法では130±80cmであった.診断と内視鏡的治療に要した平均Ⅹ線被曝時間と線量はそれぞれ2.1±2.4分と155±159dGy/cm~2であった.ダブルバル-ン法では実施例の72%で十分な診断が得られた.診断例の主たる内訳は,angiodysplasiaが34 %,種々の成因による潰瘍やびらhが16%,小腸ポリープや腫瘍が13%などであった.診断例の62%では引き続いて治療が実施された.その内,内視鏡的治療としてはAPC,ポリペクトミー,拡張術,異物除去などが42%で施行された.内科的治療が12%,外科的治療は8%の例に行われた.今回の試験成績からは,ダブルバルーン小腸内視鏡は,小腸疾患や小腸疾患が疑われる例において安全で有用な診断および治療成果をもたらす手段といえる.