(S237)Re無添加単結晶Ni基超合金NKH71の1273Kにおけるクリープ変形に伴うγ'相の形態変化

摘要

久保らは，Re無添加単結晶Ni基超合金NKH71の実用化に関する知見を得るため，1273K，130～400MPaにてクリープ試験を行い，Reを3wt．％添加した単結晶Ni基超合金CMSX－4での結果と比較した．その結果，160MPa以下の低応力条件において，CMSX－4に比べ，NKH71のクリープ破断寿命が増加するのに対し，200MPa以上ではクリープ破断寿命が著しく減少し，CMSX－4との差が高応力ほど拡大することを示した．この差異が生じた原因として，高応力側では強化相であるγ'（Ni3（Al，Ti））相が立方体状から板状のラフト構造へと連続的に形態変化するため組織安定性が失われ，さらに形成されたラフト構造の完成度が低く，可動転位の移動パスであるγ相チャネルの幅が拡大したため，破断寿命が減少したと推論した．一方，低応力側では組織安定性が高く，形成されたラフト構造が長時間維持したことで破断寿命が増力ルたと報告した1）．この結果は，CMSX－4の低応力長時間でのクリープ変形に伴うγ'相の連結挙動とは大きく異なっている．したがって，合金によりラフト構造の形成がクリープ特性へ及ぼす影響，およびラフト構造の形成機構に差異が生じている可能性がある．NKH71の実用化には，高応力側でのクリープ特性の改善とともに，クリープ特性に影響を及ぼすγ'相の形態変化，特にラフト構造の形成過程に着目することが重要である．