鉄浮吹き角炉と砂鉄吹き角炉の技術的発展

摘要

角炉は、明治期の中頃わが国で開発された、砂鉄あるいは鉄浮（鍛冶浮）を原料とする木炭銃製造炉である。 この技術が開発きれた背景は、①従来からわが国の鉄鋼生産を担ってきたたたら製鉄業者の救済、②国産原料として砂鉄や鍛冶洋を使う国策、③砂鉄銑の優れた特質である。 広島県では官営広島鉄山が明治8年から37年まで経営され、小花冬吉と引き続き研究を行った黒田正暉により鉄浮吹き角炉と丸炉の開発が行われた。 しかし、官営広島鉄山が廃業し、従事者は産業構造の転換により九州の炭坑に糧を求めた。 一方、島根県では大山林地主でもある鉄師の努力によりたたら製鉄炉の改良を含め生産が継続された。 その一方で農業構造の改革に努め、たたら製鉄が大正12年に商業生産を止めた後も農業·畜産業が振興した。 製鉄の原料として砂鉄は我国の重要な鉱物資源であったが、日清戦争後に中国の大治鉄鉱石の長期購入契約が成立し、この安価な鉄鉱石を用いて明治34年に火入れした官営八幡製鉄所で銑鋼一貫体制の鉄鋼生産が始まった。 ここに砂鉄は製鉄資源としての価値を失った。 この両面では角炉はその存在意義が失われたが、砂鉄銑の優秀さ故に刃物鋼や特殊鋼の原料として需要があり、高価にもかかわらず鳥上木炭銑工場で砂鉄吹き角炉が昭和40年まで生産を続けた。 また丸炉は帝国製鉄等で砂鉄団鉱を原料とする木炭高炉に継承された。 ここでは、黒田が開発した角炉と丸炉およびその後の発展を技術的に解明する。