チオシアン酸アンモニウム水溶液を用いた高強度薄鋼板の耐水素脆化特性評価（高強度薄鋼板の遅れ破壊特性評価に関する研究-第3報-）

摘要

TS980MPa超級高強度薄鋼板の自動車への適用拡大の阻害因子の一つに遅れ破壊が挙げられる．前報では，高強度薄鋼板の曲げ加工部で水素割れが発生する領域を，ひずみ量，負荷応力， 鋼中拡散性水素量を軸として3次元マップ化し，実際の使用条件と比較することで，実環境での 遅れ破壊の危険性を評価する手法を提案した1)．水素脆化特性評価は試験片中へ水素をチャージ する必要があるが，その代表的な手法に酸浸漬法と陰極チャージ法がある．前報で提案した手法 では，形状が複雑なプレス部品の評価および水素割れ領域マップ作製のための大量のラボサンプ ル評価を行う必要がある．それらの試験の実施には，酸浸漬が容易であると考え，塩酸浸漬法に より水素チャージを行った．しかし，塩酸浸漬法では鋼板の溶解が水素割れ評価結果に影響をお よぼす可能性がある．そこで本研究では，鋼板溶解量のほとhどない条件で水素チャージ可能な 浸漬法を検討し，塩酸浸漬法との比較を行った．