肝 adrenal rest tumor

摘要

肝adrenal rest tumor(肝副腎遺残腫瘍)は， 個体発生の過程で肝に遺残した副腎組織が腫瘍化したものと考えられている.近年の画像診断の進歩によつて偶然に発見される機会が増え， 他の肝原発性腫瘍や転移性腫瘍との鑑別が必要となる一方で，機能性腫瘍もしくは悪性化の場合などでも問題となる.2.病_因 副腎は中胚葉性と外胚葉性の2つの異なる原基から形成され，それぞれ副腎皮質と副腎髄質になる.原始副腎皮質は胎生4-5週に腸間膜根部と生殖堤の間の中皮細胞が増殖して形成される.胎生6週には後に固有副腎皮質となる中皮細胞の第二波がその周囲を取り囲み，胎生8週までに中皮組織から分離して結合織に取り囲まれ副腎皮質原基となる.一方,胎生7週には交感神経節近傍の神経堤からクロム親和性髄質細胞が発生し，原始副腎皮質内部へと移動し徐々に侵入してゆくが，完全な被包化は胎生末期まで待たねばならない.