麻酔科学史の研究（10）清水健太郎教授と日本麻酔科学会の創立

摘要

1950年（昭和25）日米連合医学教育者協議会が行われ，講師の米国ロード·アイランド病院麻酔科のマイヤー·サクラッドの講演は日本の外科医たちに大きな衝撃を与えた。このとき通訳を務めたのは米国イリノイ大学脳外科（P.Bailey教授）への2回目の留学から帰国したばかりの，東東大学第一外科の清水健太郎であった。 清水教授は戦前にも米国へ留学した経験があり，全く新しいコンセプトである麻酔科学の通訳は清水教授以外にいなかった。 清水教授が通訳になったため，東京大学第一外科からは山村秀夫博士がこの講習会に出席することになり，これが契機となって東京大学に麻酔学講座が誕生した。 麻酔に対する関心も高まり，日本外科学会，日本胸部外科学会における麻酔関係の演題数も急増したので，独立した学会の必要性が高まり，1954年（昭和29）5月1日に日本麻酔学会が設立された。 この陰には清水健太郎教授の影響が大きいと考えられる。