多パスクロスロール圧延による鋼板断面の形状制御―せh断付与圧延鋼板における創形創質に関する研究　第3報―

摘要

上下のロールをクロスさせたクロスロール任延は，鋼板の平坦度すなわちエッジドロップ制御を目的として，既に熱延·冷延·厚板ミルに利用されている．ロールをクロスすることによる特徴の一つとして，鋼板のC断面全域にせh断変形が導入される．これにより，圧延荷重を低減できるため，1パス当たりの圧下率を大きくすることが可能となる．また，上下ロールのクロス角度を大きくすると，従来の圧延鋼板では見られない塑性流動が引き起こされ，断面形状や発達する集合組織が変化する机5）．すなわち，せh断変形の導入は従来圧延にはない鋼板の形状を創り，組織を創製できる可能性があり，これを積極的に活用した形と質の制御，すなわち形質制御が実現できる．しかし，現在用いられているクロスロールミルのクロス角度はせいぜい0．70，最大でも1．50であり，これでは鋼板に導入する変形を大きく変えることはできない．著者らは，広角（～100）なクロス角度を有するクロスロール圧延の鋼板において，クロス角度や圧下率を変化させることで，従来の圧延鋼板にはない形状を創り，かつ変形を導入できることを実験と数値シミュレーションの両面から示した．