セラミックス金型による無潤滑プレス加工

摘要

プレス加工において、潤滑剤が重要な役割を演じていることはよく知られたところである。 しかしながら、近年の地球環境負荷の低減という意識の高揚から、潤滑剤をプレス加工から一掃しようとする試み、すなわち、無潤滑でプレス加工を行うとか、あるいは潤滑剤を極力使用しないようにするという試みが検討されている。 無潤滑でのプレス加工は、地球環境からすると理想と言えよう。 しかし、無潤滑の状態で加工中の工具と被加工材との摩擦状態を考えた場合、すなわち、その摩擦界面に潤滑剤がまったく存在しないような摩擦状態を考えた場合、その多くの部分では真実接触という大変厳しい状態で加工が行われると推測される。 さらに、真実接触面上では、被加工材表面の汚れ膜や酸化膜の破断が生じ、至る所で金型への焼付きの原因となる清浄面が顔をのぞかせた状況となっていると推測される。 しかし、このような過酷な状況でも、これらの被加工材と焼付きを生じにくい物質、例えば、セラミックス工具や、何がしかの金屑とは異なる硬質表面被膜をその表面に形成すれば、両者の焼付きは著しく小さく抑えられるはずである。 条件によっては、ほとhど焼き付かないことも起こり得るであろう。 この原理が、無潤滑でのプレス加工を実現させるものである。 以下においては、セラミックス工具による無潤滑絞り加工、すなわちドライ加工の実現について検討した筆者らのいくつかの実験例を紹介することにしよう。