〔腎疾患治療と動脈硬化進行防止効果〕降圧薬（抗高血圧薬）

摘要

高血圧患者では動脈硬化病変の進展が速やかで循環器系臓器障害と合併症の発症頻度が高い。 動脈硬化は血液成分（脂質，糖，蛋白，血管作動物質，血小板，単球など）と血管壁構成成分（血管内皮細胞，血管平滑筋細胞，間質組織，血管作動物質など）との病的炎症反応を端緒として進行すると考えられている。 進行した動脈硬化性粥腫はコレステロールを貪食したマクロファージ，血管平滑筋細胞，細胞外基質などによって構成されている。 降圧薬（抗高血圧薬）治療は臓器障害や合併症の発症を抑制できるとする臨床成績も多い。 その機序には降圧効果のみならず，降圧薬の多面的な作用（pleiotropic effects）による血管障害抑制ならびに動脈硬化進展抑制も関与している可能性が想定されている。 例えば，それらにはレニン-アンジオテンシン系阻害薬による血管内皮細胞機能保護，LDL-コレステロール酸化変性抑制，血小板凝集抑制，血管平滑筋細胞増殖抑制，細胞外基質増加抑制，インスリン抵抗性改善などの複合効果が含まれる（図1）。 動脈硬化発症·進展機序などの詳細は本特集の別稿に記述されているので，本稿では主として代表的な降圧薬の動脈硬化進展抑制効果について概説する。