神経 筋疾患のシミュレーションと医療応用

摘要

医学が自然科学となったのは，人体の諸現象を理論と実験から研究するようになってからであることはいうまでもない．しかし，理論と実験とは直接対応する関係にはなっておらず，むしろ実験結果の解釈から理論が導きだされることが多かった．これはと卜を実験対象とすることが不可能である以上は当然のことであった．しかし，Turingやvon Neumannらがコンピュ－タの原理を考案して以来,現象をモデル化することが可能であれば,研究の手法としてコンピュータシミュレションを利用することが可能となってきた．　 著者らのめぎしているバーチャルヒューマンとは，①神経内科の扱うさまざまな疾患，たとえばParkinson病や筋萎縮性側索硬化症などの神経症候を数値的に計測し，②モデル化を通して神経症候の数式化を行い，③コンピュータシミュレーションを行う，④さらにコンピュータシミュレーションにより元の数式の諸係数を決定する，⑤妥当性を検討してから該当する神経症候に対する治療効果や病態生理をコンピュータシミュレーションにより研究する，いわばsystem neurologyともよぶべき研究である.　 本稿では，これまで著者らの行ってきた研究の一例を紹介しながら，神経 筋疾患のシミュレーションと医療応用について概説をする.