消化性潰瘍とH.pylori とくに長期的予後の観点から

摘要

消化性潰瘍の原因は明らかではなかったが,1993年にH.pyloriが発見され,その後の臨床研究からこの菌が消化性潰瘍の原因であることが明らかとなった.さまざまな地域で除菌治療がはじまったが,わが国でも2000年11月に消化性潰瘍に射しPPI, AMPC, CAMによる除菌療法が保険適応され,潰瘍の根本的治療が本格化した.最近では除菌治療の長期的な予後についての知見も蓄積され,報告されるようになった.これまで除菌後数年以土にわたる潰瘍再発率がいくつか報告されているが.いずれも数年間で10%以内の再発率を報告している,これは潰瘍発生が地域性や人種差とは関係なくH.pyloriと関連していることを示している.H.pylori以外の最大の潰瘍発生リスクはNSAIDsの服用である.H.pyloriとNSAIDsの関連にはいまだ議論があるが,最近では両者は独立した消化性潰瘍の危険因子であると認識されている.