歯周病におけるスタチンの抗炎症作用

摘要

現代日本人の推定約9，000万人が罹患しているといわれている歯周病は組織破壊性の慢性炎症性疾患であり，生活習慣病のひとつとされている．近年，歯周病は全身疾患と深い関係があることが明らかになった．疫学研究や動物実験により，全身疾患の増悪に伴い歯周病が悪化するという報告が数多く存在するのに加え，歯周病の悪化に伴い糖尿病や心疾患などの全身疾患の罹患率が上がる報告が増えてきている．一方,高脂血症治療薬であるスタテンは動脈硬化症の原因となるコレステロール産生を抑える物質であるが，近年さまざまな組織細胞で抗炎症作用などコレステロール低下以外の作用が多数報告されている．歯周病態のメカニズムにはアテローム性動脈硬化症などの心臓血管系疾患と共通する部分かある．そこで本稿ではスタチンのヒト口腔由来細胞に対する作用を紹介し，歯周病に対するスタチンの作用を考察した．