ミ卜コンドリアセン卜ラルドグマの破綻病理

摘要

われわれの細胞の機能は核DNAにコ一ドされた遺伝子群を起点とした核セン卜ラルドグマによって制御さ れている.一方，ミ卜コンドリアにも独自のゲノム（ミ卜コンドリアDNA ： mtDNA)を起点としたミ卜コンド リアセン卜ラルドグマが存在し，細胞のエネルギ一代謝（ミ卜コンドリア呼吸機能）に寄与している.近年， mtDNA分子に生じた病原性突然変異が，全身性のミトコンドリァ呼吸機能不全を伴うミトコンドリア病（「サ イドメモ1」参照）の症例だけでなく ，神経変性疾患，糖尿病，不妊症，がhの症例，さらには老化個体から も検出されることを受け，変異型mtDNA分子種によるミトコンドリァ呼吸機能の破綻が多様な疾患群の原因 になるとして広く注目を集めるようになった.本稿では，変異型mtDNA分子種の階層的な病原性発揮につい て解説するとともに，変異型mtDNA分子種が関与すると想定されているがh化や糖尿病に関する知見を紹介したい.