小児生体肝移植における免疫抑制療法からの離脱

摘要

臓器移植の成否は，拒絶反応を抑えるために用いる免疫抑制剤の投与法にかかっていると考えられてきた．シクロスポリンの登場によって拒絶反応を劇的に抑えることができるようになり，その後も有効な免疫抑制剤を開発することが大きな課題であった．そうして，異物である臓器が宿主の体内で安定して生着し続けるためには，一生涯免疫抑制剤を服用するものと考えられた．ところが，肝移植後10年以上経過した長期生存者のなかに，最長13年もの間，薬剤を自分で止めてしまっている5火の患者のいることが判明した．免疫抑制剤を飲まずに肝が安定して機能していたのである．以後，重篤な副作用を克服するためにも免疫抑制剤をできるかぎり少なくする読みがなされてきた．当院では34人の患者が完全に薬剤を中止され，41人が減量中である．これら肝移植後の免疫抑制剤中止の現状を当院と海外でのいくつかの報告と合わせてここで紹介する．