膵島移植の免疫制御-NKT細胞による免疫寛容誘導と細胞療法－

摘要

NKT細胞は，最近マウスおよびと卜で同定された新しいタイプの免疫抑制機能をもつリンパ球集団である．移植免疫でも重要な機能を果たしており，とくにラ鳥の慢性拒絶における寛容誘導に必須であることがマウスの実験から明らかにされた．さらに．1型の糖尿病患者ではNKT細胞の機能不全が糖尿病の発症に関係していることが明らかになり，NKT細胞による免疫制御機構が注目を集めている．一方，インスリン依存性の1型糖尿病の治療のひとつとして膵のラ鳥の移植がクローズアップされているが（アメリカでは200例以上の実績），ラ島の移植拒絶は免疫抑制剤だけではコントロールできない．脳死ドナーからの移植が可能になった現在，わが国でもラ島移植の重要性が増すと考えられる．本稿では，ゼノのラ島移植の実験系でNKT細胞の存在が寛容誘導に必須であるという，著者らのマウスでの実験結果とともに，アデノウイルスを用いた遺伝子治療のための新しいモデル実験マウスを紹介する．