前頭葉機能障害の臨床 症状と神経心理学的検査法

摘要

前頭葉,とくに前頭前野の損傷による症状は,言語機能,記憶機能.遂行機能といった個々の機能領域に特異的なものではなく,機能領域横断的というべき特徴をもっている.また,前頭葉損傷による症状は,より低次の神経症状か,認知,行為などのより高次の脳機能の障害かを問わず,各機能階層にまたがる共通項が存在することも指摘されている.すなわち,前頭葉症状,とくに前頭前野の症状は"何々機能の障害"としてではなく.種々の機能領域に共通の.いわは"障害の形式"として取り出されるべきものである.本稿では著者らが前頭葉症状として取り出した5つの"障害の形式",①概念または"セット"の転換の障害(高次の保続),②ステレオタイプの抑制の障害,③複数の情報の組織化の障害,④流暢性の障害, ⑤言語(意味)による行為の制御の障害について,その神経心理学的検査法も含め紹介した.