細胞シー卜による狭窄に対する内視鏡治療

摘要

近年，内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の枝術の進歩により，広範な早期食道癌であっても切除可能となって きた.ところが，広範な食道ESDを行うとESD後の潰瘍に起因する強固な狭窄により，患者は何度も内視 鏡的バル一ン拡張術を受けなくてはならない.著者らは食道ESD後の狭窄に対し，細胞シ一ト技術を応用し て患者の自己の口腔粘膜組織から作製した培養口腔粘膜上皮細胞シー卜を経内視鏡的にESD後の潰瘍面に移 植することで，潰瘍の上皮化を促進し狭窄を抑制するという再生医療的治療法を開発した.再生医療に関する 規制に対応しながら，著者らは2011年までに臨床10例を経験し，良好かつ安全に施行しえた.近年，国内 では長崎大学と共同で空輸した培養口腔粘膜上皮細胞シ一卜を用いた臨床研究，海外ではスウェーデンの力 口リンスカ研究所と共同で早期Barrett腺癌に対する探索的な臨床研究を開始している.培養口腔粘膜上皮細 胞シ一卜は食道に対する療法として有力なオプションと考えられ，細胞シ一卜によるさらなる再生医療研究 の推進が必要である.