脈の診察

摘要

脈診は，古来より数千年の時を経て受け継がれ た伝統医学の診断技術の1つである.漢方医学に おける病態把握，診断，治療は，「望診」?「聞診」? 「問診」? 「切診」の四診によって収集された生体情 報を根拠とする.脈診は切診に含まれる診断技術 であり，とくに急性熱性疾患における脈診の分別 は比較的容易で，漢方薬選択にはきわめて有用で ある.図1にそのイメージを図示した.脈拍の速さくみやくちみゃく ふみゃくちhみやくさ（数脈?遅脈)，脈の位置(浮脈?沈脈)，強弱(有 力?無力）で，おおよその漢方医学的病態が把握 でき，適切な漢方薬の選択が可能となる.ただし， 脈診のみで漢方医学的診断?治療が完結するわけ ではなく，適切な漢方薬選択には常に四診のすべ ての情報を勘案する合診が求められる.本稿では 比較的わかりやすぐまた実臨床に有用な脈診をとりあげて解説する.