生活習慣病·慢性疾患と男性更年期 男性更年期における漢方療法とその問題点

摘要

一般に更年期とは女性に用いられる用語で,女性更年期とは, 「生殖期から非生殖期への移行期」を意味し,生体内分泌環境の急激な変化を伴うものである.男性更年期の場合は女性のように,急激な性腺機能の低下を伴わないために,この定義をそのまま当てはめるわけにはいかない.しかし,男性においても成熟期から老年期への移行期(44-55歳)を更年期と定義すれば,男性更年期障害は,この時期に起きる身体の変化や環境の変化に伴う心理的変化を背景とした心身の不定愁訴と捉えることが可能であろう.中高年男性の自殺が社会的問題となっている昨今,この世代の男性の諸問題を取り上げることは意義深いことである.柏瀬によると,男性更年期の症状は,うつ症状,循環器系症状(のぼせ,ほてり,動悸など),感覚器系症状(視力障害,めまいなど),性機能障害の田つに大別される.上記の四つの領域はいずれも漢方療法の適応となりうる.表1に更年期男性に対して使用頻度の高い漢方薬を一覧にした.