深部静脈血栓症予防の医療経済分析-薬剤経済分析（pharmacoeconomics）の応用

摘要

深部静脈血栓症（deep venous thrombosis：DVT）は，深部静脈内に血栓が形成され，その結果静脈が閉塞される疾患で，そのほとhどが下肢深部静脈に発生する．発生要因としては，ドイツの病理学者Virchowが提唱した「血流の停滞」，「血管内皮の障害」，「凝固亢進状態」のいわゆるVirchowの3原則が関与している．手術は，この3原則がすべて該当することから術後にDVTを生じやすく，特に人工関節置換術をはじめとする下肢整形外科手術で頻度が高い．さらに，続発症として，生じた血栓が遊離して肺動脈に流人し，肺血管床を閉塞することにより肺血栓塞栓症（pulmonary thromboembolism：PTE）を生じ，ときとして致死的な結果を引き起こすことがある．