胸部大動脈手術における中枢神経保護

摘要

高齢化社会の進行と，CTをはじめとするス クリーニング検査の普及などと相まって，大動脈病変を有する患者が年々増加の一途をたどつ ている.2010年の日本胸部外科学会学術調査 によると，本邦で12,439例の胸部大動脈手術 (胸腹部大動脈手術を含む：図1)力s行われ，そ の病院死亡率は7.9%であった.これは，1984 年度の712例と比べると隔世の感がある.ま た症例の内訳は，急性A型大動脈解離3，628例 (病院死亡率11.1%，以下同様)，急性B型解離 158例(18.9%),慢性A型解離866例(6.0%), 慢性B型解離724例（6.6%)，非解離大動脈瘤 待期手術6,348例（4.3%)，破裂大動脈瘤715 例（24.8%)であり，部位別に見ると，上行大 動脈手術3,361例(7.1%)，大動脈基部1,057 例（7.7%)，弓部大動脈4,028例（9.2%)，下行 大動脈869例（9.8%)，胸腹部大動脈628例 (13.7%),バイパス手術85例（10.6%)，ステン トグラフト内揷術2，411例（4.5%)であった1).