導波管型空間電力合成器を用いたLINC送信機

摘要

送信機増幅器の，線形性と電力効率性を同時に高める方法として，LINC送信機が提案されている．LINC送信機は増幅器に定包絡線信号を与え，足し合わせることで，非線形だが効率の良い増幅器を連用することができる．一方，25GHz帯など高周波での無線システムが注目を浴びている．しかし，一般的にLINC送信機にはマイクロストリップ線を用いた合成器を使用するため，これらは高周波帯では損失が大きくなる．本論文は，極めて低損失な導波管型合成器を使用したLINC送信機を提案する．ここで，3ポート型合成器は入力ポート間の結合が帯域外幅射を生じる原因となるため，結合が小さく帯域外幅射への影響が小さい，4ポート型合成器を検討した．導波管合成器の特性をアンソフトHFSS電磁解析ソフトで解析したところ，従来の合成器と比べ電力合成の損失は非常に小さく，約0.05dB以下であった．さらに，従来のLINC送信機合成器では増幅器の特性の違いや変化に伴い，線形性を損失しやすいが，導波管を利用した場合は2つの増幅器の反射係数の差が10dBまでは電力漏れせず，増幅器の特性に依存しない線形な特性を得ることが分かった．よって効率性及び線形性の面から導波管型合成器を用いたLINC送信機は有用であると言える．