［依頼講演］フェーズドアレイ気象レーダによるネットワーク観測のための圧縮センシングデータ転送に関する一考察

摘要

ゲリラ豪雨などの空間的·時間的に局所的な極端気象現象を観測するために開発されたフェーズドアレイ気象レーダは，距離方向分解能100メートル，時間分解能30秒での観測が可能である．その一方で，30秒間での観測データ量は515メガバイトととなり，1日では1テラバイトを越える．このデータは保存するだけでも大規模な量である．さらに，ネットワーク運用のために毎秒137メガビットのデータを常時転送するためには専用回線が必要となり，そのためのコストも発生する．この問題を解決するために通常のインターネット回線を利用する場合には，毎秒数10メガビット以下に圧縮する必要がある．このために本研究では圧縮センシング技術を活用する．提案手法ではランダム間引きによって圧縮を行い，目標のビットレートを実現する．転送されたデータを受信側に設置された計算サーバによって再構成する．このとき，気象観測データの局所的類似性と大域的スパース性を活用し，更に凸最適化を用いることにより，高精度かつ高速度な再構成を実現する．実データを用いたシミュレーションにより，25パーセントの圧縮データから10数パーセントの誤差で再構成できることを示す．