( S215) 9Cr フェライト系耐熱鋼におけるマルテンサイト界面とM23C6 粗大化挙動の関係

摘要

Cr を9~12 %含有する高Cr フェライト系耐熱鋼は、オーステナイト系耐熱鋼と比較して高い熱伝導率、低い熱膨張係数、低コストといった観点から火力発電用ボイラーの大径鋼管部材として利用されている。この鋼の母相であるラスマルテンサイトに含まれる界面は、相変態の際の結晶方位関係の制限によって4 種類に分類され、それぞれ旧オーステナイト (γ)粒界、パケット境界、ブロック境界およびラス境界と呼ばれる。中でもラス境界は、数度の方位差しか持たない亜粒界であり、クリープ変形中の転位運動を効果的に抑制する重要なクリープ強化因子であると報告されている1)。一方、本鋼種は主に焼戻し処理中にM23C6 炭化物が界面上に析出し、高温下における組織安定性を飛躍的に高めていることが報告されている2)。しかし、これまでに界面毎のM23C6 の分散状態を詳細に調査した例は少なく、クリープ変形中のM23C6の成長挙動に対する界面性格の影響は不明である。そこで本研究では、マルテンサイト変態時の結晶方位関係（Kurdjumov-Sacks の関係）に基づく各界面性格判別と微細組織観察を組み合わせ、M23C6 の析出·成長挙動に及ぼす界面性格の影響を定量的に評価することを目的とした。