(S046_2)低歪み速度電気化学ナノインデンテーション法によるfcc 合金の局所機械特性に及ばす水素影響の評価

摘要

水素脆化(HE)機構の理解には、局所分析手法を用いた材料組織ごと（粒界、転位、析出物など）の水素の影響の評価 が不可欠である。一方、HE は破壊現象であるため、機械特性（硬さ等）とその素過程である転位運動への水素影響に 関する知見は特に重要と考えられる。局所領域の機械特性の測定には、ナノインデンテーション法が広く用いられてい る。このため、我々は、電解液中で陰極水素チャージを行いながらその場で圧子押込み試験が可能な「電気化学ナノイ ンデンテーション(EC-NI)装置」を開発し、種々の鋼材への水素影響を調査してきた。一般に、水素による強度·靭 性の劣化は、低歪み速度(10-5/s 程度)において顕著になる。一方、EC-NI 装置は、試料や測定ヘッドの熱ドリフトのた め、通常、押込み時間は数分以下（歪み速度10-1/s 以上）である。そこで、本研究では、押込み荷重に変調を加えて熱 ドリフトを補正することで、押込み時間が3 時間（歪み速度約10-5/s）まで変更可能な「低歪み速度電気化学ナノイン デンテーション(SSR-EC-NI)装置」を新たに開発し、これを用いてHE 感受性の異なるfcc 合金への水素影響を評価した。