ボロン強化9Gr系耐熱鋼のHAZ組織形成過程

摘要

ボロン強化9Cr鋼（9Cr－3W－3Co－VNb－B）は、従来鋼のP92を超える優れたクリープ強度を有しており、ボロン強化9Cr鋼の溶接継手もP92溶接継手を超える優れたクリープ強度を有している。 特に、P91，P92やP122などの溶接継手で見られるType IV破断がボロン強化9Cr鋼の溶接継手では抑制されているため、低応力側で著しい継手のクリープ強度向上が実現した。 継手のクリープ特性向上は、ボロン強化鋼のHAZ組織に関連があり、P92等でType IV破断が生じるいわゆる細粒HAZ組織が形成されていなかった。 ボロン強化9Cr鋼では、細粒HAZに代わって母材と同程度の粒径を有する組織が形成されており、細粒HAZに起因するType IV破断が抑制されたものと考えられた。 また、ボロン添加によりクリープ中のHAZ部におけるM_(23)C_6の粗大化が抑制されており、このためHAZ部のクリープ強度低下が抑制されていることが分かった。 これらの現象により、従来では困難と考えられていた9Cr鋼のType IV破断抑制が図られており、本研究では、引き続きクリープ破断挙動を調査するとともに、ボロン強化鋼の優れたクリープ強度の原因と考えられる注HAZ組織形成過程について検討した。