多変量統計的プロセス管理－相関関係に着目した異常検出方法

摘要

製品品質向上や生産コスト削減への要求が強まる中、製造設備の運転条件を適切に管理することがますます重要になってきている。品質検査によって不良品を見付けることはできるが、製品は製造設備で作られ、品質は運転条件によって定まるのであるから、不良品の発生を防ぐには、運転条件の適切な管理が不可欠である。古くから管理図などを利用した運転条件の管理は行われているが、流量や温度など個々の運転条件を個別に管理する従来法では、アラームの誤報や異常の見過ごしを頻発することになりかねない。実際、アラームの洪水に悩む製造現場では、アラームマネジメントが喫緊の課題ともなっている。本稿では、変数間の相関関係をモデル化することで、信頼に足る異常検出を実現しようとする多変量統計的プロセス管理（Multivariate Statistical Process Control：MSPC）について、産業界での応用事例を交えながら、その基本概念をできるだけ平易に解説する。