次世代燃料電池へ向けた研究開発

摘要

固体高分子形燃料電池PEFCは小型軽量で原理的に高出力密度化や低コスト化が可能である．そのため，電気と熱を併給（コジェネレーション）する家庭用据え置き用途，燃料電池自動車FCVや携帯機器用の移動電源などへの応用に向けて，世界的な研究·開発競争が繰り広げられている．家庭用燃料電池については，エネファームの愛称のもとに，本年度より我国政府の補助金（約半額）制度の下に商用化が始まった．FCVは実用条件での性能評価や課題抽出を目的としたフィールドテストが日米欧，それに近年，アジアにおいても進められている．しかし，自動車用，家庭用の燃料電池がエネルギー·環境問題の真の救世主となるためには広範な普及が必須であり，そのためには一層の高性能化，高耐久化，低コスト化が達成されなければならない．既存材料やシステムの改良により，ある程度の性能，耐久性の向上が，また量産化であるレベルまでのコストダウンが見込まれる．しかし，課題達成のためには電極触媒，電解質膜，および周辺部材についての“革新的な新材料·技術”の開発が必須である．山梨大学は，このような背景の下，経済産業省，（独）NEDO，山梨県の支援を得て，燃料電池ナノ材料研究センターを2008年4月に設立した．それ以前の文部科学省リーディングプロジェクト「次世代燃料電池」等の成果を踏まえ，現在はNEDOから受託した「HiPer-FCプロジェクト」（2008.4より7年）を中心として，PEFCに関わる諸材料の、劣化機構解析や高性能·低コストな触媒，電解質膜，膜／電極接合体MEA等の研究開発を共同実施者等と連携して進めている．本稿では，この新プロジェクトの概要と過去一年半の研究成果を紹介する．