2.5Gb／s光通信量子暗号（Y-00）試作器のランニング特性～屋外光ファイバ伝送路160km時の伝送特性

摘要

様々な日常生活でネット社会の便利さを実感している．便利になるにつれ，第三者に盗み見られたくない情報も通信されるようになっている．大量データが通信される光ファイバ回線から情報が盗聴されると，大量の情報漏洩に繋がる．数理暗号によりネットは安全と言われているが，数理暗号の解読の歴史を振り返ると，実際に安全なのか疑問になる．ネットの安全性に関して，腰を据えて考える時期が来ているのではないだろうか．実際，米国のDARPA（国防高等研究計画局）は，物理暗号の研究開発方針を大きく転換し，通信性能に優れた新たな物理暗号の公募を7月に締め切った．筆者等は，究極的に解読不可能な安全性を実現できる可能性を秘めた物理暗号であるY-00（光通信量子暗号）を用いて安全性の高い暗号通信技術の研究を行ってきている．これまで，安全性評価としてランダム暗号性の実験評価を行い，また，ビットレートがGb／S以上で長距離光ファイバ通信が可能であることを検証している．Y-00は光ファイバ通信システムと整合性が高い点が特長であり，Y-00暗号トランシーバの試作を行い，波長分割多重方式の適用可能性も実証した．本稿では，実用化に向け，2.5Gb／Sの強度変調Y-00暗号トランシーバのフィールドテストを行い，2ケ月間にわたりエラーフリー動作を検証したので，その結果を報告する．